建設業では、工事の完成引渡し時や、工事の進捗(出来高)に応じて代金が支払われる「出来高払い」という慣行が広く定着しています。長期間にわたる工事では当然の仕組みに思えますが、この支払い方式こそが、建設業の資金繰りを構造的に圧迫する要因のひとつになっています。材料費・労務費・重機のリース料などのコストは工事の進行に伴って日々発生する一方、それに見合う入金は数週間から数か月先になることも珍しくありません。

さらに建設業は、資材価格の高止まりや職人不足による人件費の上昇に加え、2024年4月からの時間外労働の上限規制、2026年1月施行の下請法改正など、経営環境が大きく変化している業種でもあります。本コラムでは、出来高払いと多重下請け構造が資金繰りに与える影響と、その対処法を整理します。

出来高払いの仕組みと、資金繰りが圧迫される理由

出来高払いの仕組みと、資金繰りが圧迫される理由

出来高払いとは、工事全体の完成を待たず、施工の進捗度合いに応じて代金の一部を受け取る支払い方式です。着手金・中間金・完成金に分けて支払われるケースや、月次の出来高査定に基づいて分割払いされるケースなどがあります。工事の長期化に対応した合理的な仕組みである一方、発注者側の出来高査定に時間を要したり、査定額が実際に投入した材料費・労務費と一致しなかったりすると、その分だけ資金繰りに影響が出ます。

また、工事代金の一部を完成後まで留保する「保留金」の慣行も、資金繰りを圧迫する要因のひとつです。保留金は施工不良や引渡し後のトラブルに備えた発注者側のリスクヘッジとして機能しますが、受注者側からすると、実際に投入した費用の一部を長期間回収できない状態が続くことになります。

下請け構造が「入金までの時間」をさらに長くする

多重下請け構造における「支払の連鎖」

建設業では、発注者(施主)→元請け→一次下請け→二次下請けという多層的な下請け構造が一般的です。この構造の中では、元請けが発注者から入金を受けて初めて下請けへの支払いが行われる「支払いの連鎖」が生じやすく、下位の事業者ほど入金までの期間が長くなりがちです。

こうした課題に対応するため、建設業法では下請代金の支払いルールが定められています。国土交通省の解説によれば、元請負人は注文者から支払いを受けたら1か月以内に、かつ、できる限り短い期間で下請代金を支払わなければなりません。さらに、一定規模以上の「特定建設業者」については、注文者からの入金の有無にかかわらず、下請負人からの引渡しの申出日から50日以内に支払う義務が建設業法第24条の6で定められています。

もっとも、こうしたルールがあっても、資材費や労務費を先行して立て替える構造そのものが変わるわけではありません。加えて、2026年1月には下請法が改正され、「中小受託取引適正化法(取適法)」として施行されました。工事請負契約自体は引き続き建設業法が適用されますが、資材運送の委託など「工事以外の委託業務」については取適法の対象が拡大され、手形・電子記録債権による決済期間を60日以内とすることが義務付けられるなど、支払いサイトの適正化に向けた動きが強まっています。建設業に関わる取引全体で、支払いの早期化・適正化が求められる局面に入っているといえるでしょう。

資金繰り悪化が招くリスク

こうした構造的な負担は、倒産動向にも表れています。帝国データバンクの調査によると、2024年に発生した建設業の倒産は1,890件にのぼり、過去10年で最多となりました。従業員数10人未満の小規模事業者が9割以上を占めており、木材をはじめとした建築資材価格の高止まりに加え、職人不足に伴う人件費の高騰が、中小建設業者の経営を圧迫していると分析されています。また、2024年度の「人手不足倒産」は建設業が111件と全業種中最多であったことも報告されています。

利益が出ていても、資金が不足する「黒字倒産」のリスク

受注が好調で手持ち工事が多い状態であっても、現金の裏付けが伴わなければ「黒字倒産」に陥るリスクがあります。資金繰りが厳しくなると、資材の先行仕入れや職人への労務費支払いが滞り、工期の遅延や信用低下を招く悪循環にもつながりかねません。建設業も2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されており、人件費の上昇圧力が今後も資金繰りに影響を与え続けると見込まれます。

対応策:建設業が取れる資金繰り改善のアプローチ

まず基本となるのは、出来高査定の早期化を発注者に依頼する、契約時に中間金の割合を増やす交渉をするなど、支払い条件そのものを見直す取り組みです。建設業法上のルール(1か月以内、特定建設業者は50日以内)を踏まえ、契約書上の支払いサイトが適正かどうかを確認することも重要です。

まずは、資金繰りを安定させるための選択肢を知る

金融機関からの融資も選択肢の一つですが、審査には一定の期間を要し、赤字決算や担保不足の場合には希望額を調達できないこともあります。そこで検討したいのが、売掛債権買取サービスです。工事の進捗に応じて発生した請負代金債権については、条件によって、入金前に資金化できる場合があります。

売掛債権買取サービスは融資と異なり、審査の重点が自社の信用力ではなく債権の支払企業(発注者・元請け)の信用力に置かれるため、赤字決算や税金の未納があっても利用しやすいという特徴があります。保留金部分を含めた債権についても、条件次第で資金化の対象となるケースがあります。

まとめ

出来高払いという商慣行そのものは、工事の性質上、簡単には変わりません。一方で、2026年施行の取適法など、支払いの適正化に向けた制度面の動きは着実に進んでいます。

とはいえ、制度の整備を待つだけでは、目の前の資金繰りは改善しません。発注者との支払い条件交渉、社内での資金繰り管理の徹底に加え、売掛債権買取サービスのような資金調達の選択肢をあらかじめ複数持っておくことが、資材高騰や人手不足が続く建設業界を乗り切るための土台になります。「まだ大丈夫」と感じている段階だからこそ、資金繰りへの備えが重要です。少しでも不安を感じたら、REARTH TOKYO(リアース東京)へ早めにご相談ください。

注釈

本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。

出典・参考リンク